祈りの回廊

特別講話

「飛鳥の風を伝える「謎の大寺」の法灯、再び明るく」NEW 川原寺跡 弘福寺
住職/扇谷 明英 師

特別講話ダイジェストムービー(川原寺跡 弘福寺)

のちの天智天皇である中大兄皇子が、お母様の斉明天皇の菩提を弔って斉明天皇の川原宮跡に寺院を建立したことに始まると伝えられております。一塔二金堂式という飛鳥時代には画期的な建物だったことがわかってきました。時々お受けする「川原寺と弘福寺、名前が2つあるのはなぜ?」とのご質問は、なかなか難問です。弘福寺と言う名は平安時代に出てきますが創建当時について含めて不詳な点が多く、「謎の大寺」と呼ばれることもあるお寺です。
─想像の余地が多く残されたお寺なのですね。
明日香村を巡るとき、古代を想起してワクワクされる方は多いことでしょう。当寺の写経道場からの眺めにも「まるでタイムスリップしたようですね」とおっしゃってくださる方がおいでです。窓から見える四角く盛り上がっているところは講堂跡。そして草原の向こう正面に天香久山。持統天皇が「春過ぎて夏来にけらし白妙の衣ほすてふ天の香具山」と詠んだ山です。この道場は『日本書紀』に「天武天皇が書生を集めて川原寺で一切経の写経を行った」と記された、日本で初めて写経が行われたとされる場所に建っております。最近はSNSで知ってくださった方や外国からの旅行者もよくお越しくださいます。どなたにも堅苦しくならずに、墨をすっての写経で仏教に触れてもらいたくて、お手本も簡易なものなど複数ご用意しています。そうそう、境内に「瑪瑙(めのう)石」と呼んでいる中金堂の礎石が遺されていまして、これは大理石でできた希少な礎石なんですよ。こうした1400年前の光景を彷彿とさせる空間で心落ち着く時間を過ごしてもらえたらと願いながら皆様をお迎えしています。
─住職を継いでから始めた新たな取り組みもあると伺いました。
「おかえり塼仏(せんぶつ)」という特別公開を始めました。川原寺中金堂の内壁は金箔を施した三尊塼仏をタイルのように張り巡らせていたそうで、川原寺裏山遺跡からは多数の塼仏などが出土しています。飛鳥時代の明日香村が国際都市だったと感じさせてくれる川原寺の遺物を、川原寺跡 弘福寺でご覧いただくのは念願でした。2026年もゴールデンウィーク中に開催する予定です。明日香村に足を運び、飛鳥時代に想いを馳せていただけたらうれしく思います。

プロフィール

川原寺跡 弘福寺/
住職 扇谷 明英(おうぎたにみょうえい)師


川原寺跡 弘福寺に三人姉妹の次女として生まれる。住職である父亡き後、跡を継ぎ仏門へ。本堂の常時公開や特別公開「おかえり塼仏」など、住職として新たな取り組みを行っている。

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