祈りの回廊

特別講話

「生駒山をご神体として始まった社と杜を守り継ぐ」NEW 往馬大社
宮司/谷野 浩重 氏

特別講話ダイジェストムービー(往馬大社)

─ご祭神などについて教えてください。
─ご祭神などについて教えてください。
往馬大社は、生駒山を御神体としてお祭りされた非常に古い形態の神社で、本殿は生駒山を背にしてすべて東向きに建っております。神社は南向きになることが多いのですが、当社は生駒山を拝むかたちで七柱の神様をお祀りしています。『延喜式(えんぎしき)』を紐解くと、もともとは産土神の伊古麻都比古神(いこまつひこのかみ)と伊古麻都比売神(いこまつひめのかみ)の二柱を祀っていたと記されています。鎌倉時代になって五柱の八幡神が合わせ祀られるようになりました。当社の八幡神は神功皇后を中心としたご家族でして、その神功皇后の本地仏(ほんじぶつ※1)であると伝わる十一面観音像を安置するお堂も境内にございます。神仏習合の名残りですね。本地仏が描かれた『生駒曼荼羅』(室町時代/県指定文化財/奈良国立博物館所蔵)も当社に伝えられております。「なんで神社に仏像があるのですか」とたまにお尋ねになる方がいらっしゃいます。「日本は神仏が一緒にあった時代が長いのです」というお話をさせていただいております。

(※1)「仏や菩薩が仮の姿として現れたものが日本の神々」という考えがあり、「本地仏」はその本来の姿である仏や菩薩を指す
─往馬大社は「火祭り」でも知られていますね。
毎年スポーツの日の前日に行う行事で、奈良県無形民俗文化財に指定されています。当初は旧暦の8月11日でした。簡単なご説明になりますが豊作の感謝祭で、地域の方がそれぞれ作物をお供えして神様にお礼をするというものです。行事は南北2つの地域に分かれて進み、火松明を担いで7段の階段をいち早く駆け降りるのを競うのがクライマックスです。
─これからに向けての思いやご予定をお聞かせ願えますか。
令和8年(2026)4月、宮司を息子に引き継ぐ予定です。権禰宜(ごんねぎ)としてウェブでの発信や境内でのコーヒーイベントなどを始めて、そうしたことをきっかけにお参りくださるご近所の方、若い世代の方もおいでです。新しい発想とともに伝統的なことを引き継いでほしいですね。往馬大社の社叢(そう)は奈良県の天然記念物なんですね。宅地開発が進んだ今、貴重な自然の森となっています。そうした空間で過ごすことで気持ちが安らぐこともあるのではないでしょうか。午年である令和8年(2026)もまた心身を清めに往馬大社にぜひお参りください。

プロフィール

往馬大社/
宮司 谷野 浩重(たにのひろしげ)氏


昭和63年(1988)から往馬大社にて神職、平成5年(1993)から宮司を務める。明治時代以降、谷野家が宮司を継ぐようになって5代目となる。

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